裁判員制度の悩み

ニュースを伝えるメディアにとって、裁判員制度というものは、多くの課題を突き付けている。あの関西のラジオ界の巨匠も悩んでいるというのは興味深い。

裁判員制度:「予断」に基準なく、ラジオの「しゃべり」も模索−−浜村淳さん
 裁判員制度の施行が人気ラジオ番組に思わぬ影響を与えている。新聞の事件報道を題材に、時には容疑者を一刀両断にして支持を得ている近畿の民放局・毎日放送MBS)ラジオの「ありがとう浜村淳です」。36年目の長寿番組も「裁判員に有罪、無罪の予断を与えない」との配慮を求められ、しゃべりの達人のタレント、浜村淳さん(74)も「明確な基準がない。どうすればいいの」と頭を悩ませている。
(中略)
浜村さんは毎回、一般紙やスポーツ紙などに目を通し、気になった記事を最低20本切り抜く。コメントを考えて本番で7本前後を紹介。卑劣な犯罪を「許せない」という市民感情を代弁し、容疑者を厳しく断罪して、共感を得てきた。
 一方、5月21日に施行された裁判員制度では、事件報道を巡って「無罪推定」の原則に基づき、報道各社がガイドラインをつくるなど対応する。
 施行後も思わず容疑者に厳しく言ってしまうことがあるという浜村さん。「番組はできるだけ(あいまいな表現を使って)水っぽくしたくない。新しいしゃべり方を見つけていくしかない」と知恵を絞る。【毎日.jp】

何らかの基準を作るというのは、放送局の場合はおそらく系列単位でどこの局もやっていることと思う。私の勤める局でも、上記のようなガイドラインに従って報道していくことになる。基本的に、刑事裁判は判決が確定するまでは有罪でも無罪でもないという原則論を、今後はもっと順守していかなければならなくなるということである。そうすると、犯人視した発言や報道はできないという理論も成り立ってしまうということだ。
浜村淳さんの番組がいわゆるニュース番組として括られることはないのだろうが、メディアの考え方として、どこまで何を伝えるべきなのか、裁判員制度が始まることで、メディアも新たな対応を迫られることだけは確かである。