クライマーズ・ハイ

横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」を読んだ。

クライマーズ・ハイ (文春文庫)





この小説には痺れた。


大事故を目の前にしての、新聞記者という人種の考え方。
社内各部署の様々な事情と、それによって翻弄される紙面。
地元ローカルのメディアとしての、限界と誇り。
ニュースとしての、人の命の重さ。


私の場合は、小説の主人公・悠木と同じようにローカル局に勤務する分、この小説を余計に面白く感じる部分もあるだろう。
仕事と重なる部分もあったりして、他人事には思えない小説だ。



主人公・悠木と若手記者の関係には、思わず手に汗を握る。
ストーリーとしては、このあたりの一連の流れが一番緊張感を感じた。


それに、たとえば作品中で、
等々力社会部長に「仕事に大きいも小さいもない。取材対象が大きいか小さいかだけだ」なんて台詞を言わせているが、
こういう部分は、そのままローカル局員の気持ちにも通じる。


そして、これまでの部署での経験も踏まえると、ストーリー上は敵役に近い販売局の気持ちもわかる。
作中で伊東販売局長が「白紙の新聞でも俺らが売ってきてやる」というような台詞を言うところは震えた。
これに近い思いを、たとえば局の外勤営業も持っている。


録画しておいたドラマも見たが、これに関しては小説が絶対に面白い。
ドラマを見た人は、是非小説も一読をおすすめする。
(ちなみに、ドラマも相当面白いドラマです。そこらの連ドラより確実に面白いです。それでも小説は、ドラマ版より面白い。ドラマで描けなかった人間関係が見事です。)