オシムの言葉

発売直後は売り切れ続出だったらしいが、たしかに、この本は素晴らしい。


そして、私は「オシムの言葉」を読む前に偶然こちらの本を読んでいたので、
期せずして、旧ユーゴスラビアのことを大いに勉強してしまった。


イビチャ・オシムという人物はどうやら偏屈ジジイみたいだが、
その能力と人間性はハンパではないようだ。
何が凄いかというと、どんな民族からも尊敬を受けていること。
これがどれだけ凄いことかというのは、「戦争広告代理店」を読めばなんとなく理解できる。
内戦となった時、さぞやオシムは無念だったろうし、
民族を代表する立場に置かれてしまった当時の選手たちも、過酷な運命を呪っただろう。


ウイットと深い示唆に富むオシムの言葉は、
それだけのバックボーンから生まれるのだろう。


そして、「戦争広告代理店」では、メディアに携わるものとして、
政府のプロパガンダに協力するつもりがなくとも、結果として手伝ってしまうということの恐ろしさを感じた。
セルビアボスニアの真の姿がどうであれ、報道されたことが真実になってしまう。
これはあらゆる組織でも、同じようなことが言えると思う。
常に気をつけるべし、だ。
(ただし、「戦争広告代理店」に書かれているのは、
日本流に言うとPR会社であって、日本の広告代理店とはちょっと違うのではないか。これは誤解しやすいと思った。)



最後におせっかいだが、
読む順番としては、「戦争広告代理店」を読んで「オシムの言葉」を読んだほうがいいと思う。
その方が双方の中身をより深く理解できるので。