激震マスメディア

NHKの「激震 マスメディア」を見たが、この手の番組はやはり議論が上手くかみ合わないのがもどかしい。
NHKスペシャル
読売新聞の内山社長、民放連の広瀬会長らが出演する一方、ドワンゴの川上社長やジャーナリストの佐々木俊尚氏らが出演しているのだが、奇しくも川上社長の言うように「マスメディアとネットは別の国」という感じがした。


番組の中で唯一といってもいいくらい興味を惹かれたのは、AOLが自らニュースメディアを編成している試み。名うてのジャーナリストがネット企業の独自メディアで記事を書くというのは、将来に向けて注目するべき試みだと思う。これが成功するならば、ネットのジャーナリズムというのは大いに可能性があると思う。
ただし、番組内で広瀬会長が話していたように、少なくともTV局にとっては報道が儲からないというのも事実。新聞社やTV局が次々とつぶれた時に、ネット企業は果たしてどう動くのだろうか。おそらく、今後ニュースメディアが生き残るには、Yahoo!Japanやgoogleが自前でメディアを持つ方法くらいしか、ニュースメディアの生き残る道はないと思うけど。


ところで、今回この番組を見ていて改めて感じたのは、マスコミって、メディア側の人間が考えている以上にネットの住人に信用がないということである。
おそらくどこのTV局でも同じだと思うが、普段の取材においてはもちろんネットの情報は十分に参考にさせてもらっているが、その情報をそのまま使うなんてことは危なっかしくてできないし、実際にリアルの人間に取材しないことには信用性が担保できないというのが普通の感覚だと思う。さらに、県庁や市役所などの行政から警察情報、さらに経済情報など、あらゆるニュースに対して裏を取るというのは基本のことだと思っているのではなかろうか。
ところが、ネットの住人にとっては、マスコミの情報は、局(新聞社)の意向がバイアスとしてかかっているので信用できないし面白くないというのがどうやら意見の総論に近い気がする。真実に近い、もしくは誤りではないという情報を伝えようとするマスコミと、情報をそのまま伝えてほしいというマスコミ以外の人の人間の違いに加えて、私の感覚では、ネットの住人が求めているのは、取材のプロセスの結果生まれてくる情報ではなく、そのプロセス自体が知りたいということである。このギャップは如何ともしがたいし、正直、マスコミ自身が解消するには非常に難しい問題であると思う。
どうやら、マスコミは政治家と同じような見方をされているのかもしれない。


それにしても、番組中でもニコニコ動画の一幕として紹介されていたが、記者会見をそのまま垂れ流しで見るなんて人たちがいることに私なんかは驚いてしまう、というのが正直なところだ。
私はローカル局勤務なので、大臣とかに取材するような機会はあまりないのだが、はっきり言って、会見なんてそんなに見るべきものはないというのが私の感覚だし、むしろ何が重要なのかわからなければ、あんなもの聞いていても楽しくもなんともないと思うのだけど、それを楽しんで見ているというのは、やっぱり相当知的レベルの高い人たちか、自分以外の他者に伝えるという意識がないからなんだろうなあと思う。