ついにキター!!

多くの人が知っているように、
日本のTV業界は、広告会社がいなければ成り立たない構造になっている。
で、こんなニュース。

公正取引委員会は8日、「テレビコマーシャル(CM)取引への新規参入が困難で、報酬額の算定基準も不透明」として、テレビ局や広告業界などに取引慣行の改善を求める調査報告書を発表した。報告書に強制力はないが、公取委は「継続的に自主的な改善を促したい」としている。
報告書は、現行のCM契約が、大手広告会社がCM枠の大部分を確保する慣行になっており、販売枠についてテレビ局側の情報開示も少ないことなどが、広告会社の新規参入障壁になっていると指摘。「放送の公共性から、新規参入を促すことが必要」として、CM枠の価格表を明らかにし、CM枠の販売に広告会社による入札制を取り入れることなどを提案した。
 テレビ広告費は年間総広告費の35%を占め、そのうち電通博報堂DY、ADKの上位3社のシェアが65%を占めている。公取委による広告業界の調査は26年ぶり。
(MSN-Mainichi)
http://www.mainichi-msn.co.jp/keizai/wadai/news/20051109k0000m020074000c.html

CM枠を商品として考えると、大きく分けてタイムとスポットの2種類がある。*1
ここでいう“CM枠”は、主にネットタイム枠のことだと思われる。


普通、19時〜22時くらいの時間帯で「提供は〜でお送りしました」と言っている枠は、ほとんどこのネットタイム枠だ。
全国ネットでCMが流れるから*2、“ネット”タイム枠である。
この時間帯のCMは、キー局が一括で料金を請求し、ローカル局に配分するというのが一般的な仕組みである。


この時間帯、つまりゴールデンタイムのタイム枠は、
どこの広告会社でも売っていい枠と、そうではない枠がある。
(もちろん、他の時間帯でもそういう枠はありますけどね。)


で、公取が問題視しているのは、この“代理店買い切り”的なものだと推測するのだが、
何故これが問題かと言うと、
あるCM枠が空いたとしても、その枠を欲しい会社が、すんなり入れる場合とそうではない場合があるからだ。
またTV局の営業は、
広告会社の足を引っ張る行為になりかねないので、
スポンサーの広告担当者とCM料金について具体的な話をすることは、あまりやらない。
ましてや、他社の料金について話すことはタブーである。
これが結果として、他のスポンサーがどのような料金で枠を購入しているのか知らない、
という状況を生み出しているようだ。


特定の会社がたくさん枠を確保していたら、当然他の会社は参入することができないわけで、
公取は、このような状況に対して改善を求めたのだろう。
CM枠の料金は、カタログなどで売っているものではないので、
多くのスポンサーは、料金体系が不透明であると思っているようだ。
まあ実際に、同じ枠でも実施料金が違うなんて事もある。
(これはスポットCMにも同じことが言えるのだけど。)


だからと言って、入札などが実効性があるとは正直思えないが、
今までのように代理店とTV局が持ちつ持たれつでやっていける時代も終わりつつあるのだろうな、
と感じさせるニュースである。
このニュースは、我々TV局はもちろん、
業界最大手のD社が確立したビジネスモデルにも変化を及ぼしかねないような、
なかなかに難しい問題である。

*1:おおまかに分けると、「提供は〜」とスポンサー名をクレジットするのが「タイム」で、番組と番組の間に流れるCMは「スポット」

*2:ちなみに、全国ネットではない提供枠は「ローカルタイム」枠。たとえば関東地区だけで流れる場合は「関東ローカル」とか。